

(写真左より)旭化成株式会社 健康経営推進室 下妻様、内村様
■ はじめに
旭化成株式会社(以下、旭化成)は、2020年10月に「健康経営宣言」を策定し、健康経営目標の一つとして「睡眠の質・量の向上」を掲げています。
また、同社は、2021年度より株式会社ニューロスペース(以下、ニューロスペース)の睡眠改善プログラム Biz Sleep を中心に、全社向け睡眠セミナーや交代勤務者向け研修動画などのコンテンツを活用し、睡眠改善に取り組んできました。
本記事では、旭化成が推進する睡眠改善施策の全体像と、2025年度の取り組み結果をご紹介します。
■ 導入の流れ
旭化成の睡眠改善施策の特徴は、従業員全体の睡眠リテラシー向上を目指す全社施策(ポピュレーションアプローチ)と、睡眠課題が深刻な従業員への個別支援(ハイリスクアプローチ)との2軸で取り組んでいる点にあります。
1. ポピュレーションアプローチ
① 睡眠セミナーの実施やメールマガジンの配信による情報提供
従業員全体の睡眠リテラシー向上を目的にセミナーやメールマガジンを配信。睡眠の重要性や改善方法を伝えることで、睡眠に関心を持つきっかけを提供し、従業員一人ひとりのセルフコンディショニングを支援しています。
② 職場への情報連携と環境整備
不眠者の割合や不眠が原因で業務や日常生活へ影響が出ている人の割合など、各職場と連携することで、睡眠課題への理解促進と対策の検討、環境整備につなげています。
こうした全社向け施策により、睡眠を“個人の問題”としてだけでなく、組織全体で取り組むべき健康課題として位置づけています。
2. ハイリスクアプローチ
① 睡眠不良者の抽出
睡眠状態の把握には、不眠症重症度質問票(Insomnia Severity Index:ISI、以下 ISI)を用いた睡眠アンケートを活用しています。これにより、睡眠課題を抱える従業員を抽出します。
② 産業保健スタッフによる面談
ISIで中等症以上と判定された方を対象に、産業医や保健師が面談を実施。睡眠の状況や背景要因を確認したうえで、睡眠習慣に関するアドバイスや今後の対応方針を検討します。
③ 状況に応じた支援プログラムの提供
対象者の状況に応じて、以下の2つのプログラムを提供しています。
<ベーシックプログラム>
・医療機関の紹介およびフォロー
・職場への介入
・保健指導
<アドバンスプログラム>
・睡眠改善プログラム(ニューロスペース提供)
このように、睡眠の課題が顕在化している方に対しては、産業保健スタッフによるフォローとニューロスペースのサービスを連携させながら、適切な支援につなげています。

■ 施策を支える睡眠アンケート
これらの施策を効果的に進めるため、旭化成ではトライアルを経て、2025年より従業員の睡眠状態を定量的に把握する「睡眠アンケート」を全社で本格導入しました。
従来は、健康診断時の問診にある「睡眠で十分な休養がとれていますか?」という単一設問を中心に実態を把握していましたが、この方法では、睡眠が仕事や日常生活に与える影響、不眠の重症度、睡眠不良の背景要因まで十分に把握することが難しい、という課題がありました。
また、回答形式も「はい / いいえ」の2件法のため、睡眠状況を多面的かつ精緻に把握するには不十分でした。そこで同社では、睡眠の状態をより実態に即して把握するため、下記のようにアンケート内容を見直しました。

このように睡眠アンケートを改良したことで、各地区において睡眠課題を抱える従業員を把握するだけでなく、その背景にある要因も含めて捉えやすくなりました。これにより、実態に即したより効果的な施策立案・展開につなげられる調査基盤が整いました。
■ ニューロスペースによる支援内容
① 睡眠改善プログラム Biz Sleep
旭化成では、ハイリスクアプローチ施策の一環として、ニューロスペースの睡眠改善プログラムを活用しながら取り組みを進めてきました。
2025年度は148名が同プログラムを利用し、以下のような成果がみられました。
<主な成果>
(1)睡眠休養感の改善
「睡眠で休養がとれている※」と回答した方の割合は、30%から62%へと32ポイント上昇し、約2倍に増加しました。睡眠休養感は、健康経営の指標としても重視されている項目であり、一定の改善傾向が確認されました。 ※「十分とれている」「まあまあとれている」の合算
(2)ISIスコアの改善
前述した睡眠アンケートの主要指標であるISIスコアの前後比較では、参加者全体の74%において開始前後でスコアの改善が確認されました。主観的な睡眠の実感に加えて、不眠症状の程度を示す指標においても、多くの参加者で変化が確認されています。
(3)プログラム満足度は82%
プログラム満足度※については、82%が「満足」と回答しました。多くの参加者にとって、取り組み内容が受け入れられ、前向きに評価されたことがうかがえる結果となりました。 ※「大変満足している」「満足している」の合算
※本結果は、2025年度における睡眠改善プログラムの参加者を対象としたものであり、旭化成全従業員の睡眠状況を示すものではありません。

図1:開始時と終了時における睡眠休養感の比較

② 交代勤務者向け動画
交代勤務者は、勤務時間帯の特性から生活リズムが不規則になりやすく、睡眠課題を抱えやすい傾向があります。加えて旭化成では、工場ごとに勤務体系が異なるだけでなく、同一工場内でも複数の勤務体系が運用されているため、一律の研修内容では現場の実情に十分対応しきれないという難しさがありました。
旭化成では2025年1月に、交代勤務者の実情に合わせた研修動画をニューロスペースとともに作成しました。


図2:実際のスライド
■ 今後に向けて
旭化成では、睡眠を健康経営における重要テーマの一つと位置づけ、調査・啓発・個別支援を組み合わせながら、継続的に取り組みを推進してきました。
また、ニューロスペースの睡眠改善プログラムの活用範囲についても、対象者や対象拠点を段階的に拡大しながら、全社的な施策へと発展させてきました。
ニューロスペースは今後も、睡眠改善プログラムや各種コンテンツの提供を通じて、企業の健康経営の推進を支援してまいります。
<参考>
これまでの取り組みについては、過去の事例記事でもご紹介しています。あわせてご覧ください。