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交代勤務者の睡眠課題と改善対策

具体的な3つのシフト事例に基づき紹介

〜社会全体で包括的な仕組みの構築が必要〜

· お役立ち情報,お知らせ

 

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現代社会における交代勤務者の現状

現代のグローバル社会、24時間型社会において、製造、運輸、医療、IT、飲食、公共サービスなど、我々の生体リズムに逆らいながら勤務を強いられている労働者は着実に増加しており、厚生労働省が行った平成24年労働者健康状況調査によると、21.8%の我が国の労働者が深夜業(22時から明け方5時の間に行われる業務)を含む交代勤務あるいは深夜業に従事しているとされ、 この十数年で着実にこの勤務者数の割合は増加しています。
2024年4月に発表された最新の就業者数である6750万人の数字を利用しても、交代勤務で働く労働者は1472万人と推計されます。

 

交代勤務で働く労働者の生声と実態

実際に、弊社が睡眠改善プログラムを提供させて頂いた、某大手外食チェーンや某航空会社の交代勤務で働く現場の社員からは多くの睡眠の悩みの声が寄せられています。
外食チェーンでは、アルバイトが入れないシフトは全て店長が補填するため、店長の生活リズムは日勤・夜勤がバラバラであり規則性がほとんど無い状態であり、「身体は疲れているが眠れない」「いくら寝ても疲れがとれない」といった声が、睡眠相談窓口に毎回300件近く相談が寄せられている。また、航空会社の客室乗務員(CA)からヒアリングすると、CAという華やかに見える職業にあこがれて入社しても、時差ボケが前提とした労働に耐えられず実際に長く続けられる人は先天的にリズムのズレなどに強い人だけだという現実もあります。

 

交代勤務者の健康リスク

1日24時間という限られた時間の中、勤務時間が増えれば、それ以外の時間が犠牲になります。
我々は勤務以外の時間に食事、家事、入浴、睡眠などを割り当てているが、この数十年における労働時間の変化によって最も短縮したのは睡眠時間であることが報告されています。[1]
[1] 山本勲・黒田祥子 (2014). 労働時間の経済分析 日本経済新聞出版社

そして、全労働者の中でも睡眠時間を犠牲にしているのが、交代勤務者であり、厚生労働省が行った平成24年労働者健康状況調査によると、とりわけ深夜業を含むシフト勤務者の割合が多い航空運輸業、鉄道業、飲食業(深夜業従事者割合:それぞれ23.6%、52.8%、28.2%)では、13%以上の勤務者が睡眠時間5時間未満と、全労働者平均の1.5倍以上の睡眠不足者を抱えています。
まず、6時間睡眠ですら10日を超えると徹夜明けと同じレベルにまで認知機能が低下する[2]ことが知られているが、シフト勤務に伴う不規則な生活は、さまざまな健康リスクを抱えることが、最近の疫学調査で明らかになっており、中でも肥満(1.14倍)、心疾患(2.32倍)、前立腺がん(3.0倍)、乳がん(1.79倍)が日勤者に比べて有意に高いリスクとなっています。[3]

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厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023 交替制勤務者の健康課題と対策について

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出典:健康づくりのための睡眠ガイド 2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001254003.pdf

国も交替制勤務者の睡眠課題を重視しており、こちらのガイドの方でも上述の健康リスクと推奨事項が示されています。

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エビデンスとして公表されているものに限るが、休憩中の仮眠、カフェイン摂取、遮光の3つが具体的な対策として示されていますので、それぞれポイントを解説します。
仮眠とカフェイン

  • 夜勤の休憩中の仮眠は仕事効率の改善に繋がる
  • 逆に、60分以上の仮眠は睡眠慣性(眠り続ける力)が働き、後の仕事効率の低下に繋がる
  • 仮眠の前にカフェインを摂取すると起床後の仕事効率が向上する

遮光

  • 光は体内時計を調整する働きがある。
  • シフト状況次第では、特定のタイミングで意図的に光を浴 びたり、サングラス等を用いて遮光することにより、体内時計を交替制勤務に適応させることが有効である。

 

従業員自身でコントロールできる交代勤務の対策

ここからは弊社ニューロスペースが提供している睡眠セミナーの一部をご紹介させて頂きます。

まず、どれだけ不規則な勤務形態でも共通する原則が7つあります。
※こちらの原則は時差ボケ調整の際にも応用可能です。

  1. 原則として、1週間の内頻度が多いシフトリズムに体内時計を固定するのがBETTER
  2. 原則として、体内時計は後退させるほうが楽で前進させるシフトは身体にとても負担がかかる
  3. 昼間に本睡眠を取るときには眠りの質を下げないために遮光カーテンやアイマスクや耳栓を使う
  4. アンカースリープを心がける(1日で共通して寝ている時間帯を増やす)
  5. 睡眠圧を意識して出来る限り、長い睡眠時間、仮眠も含む休息時間の確保、およびカフェイン摂取を意識する
  6. その日の主となる睡眠前の食事・入浴・調光などは日勤と基本的に同じ
  7. 適宜サプリメント、ビタミンD、GABA、メラトニン(個人輸入)なども服用する
    ※メラトニンは海外ではOTCで簡単に購入可能ですが、日本では販売が薬機法で禁止されています。現在国内では個人輸入という形で最大2ヶ月分を購入することが可能です。
    詳しくは以下の厚生労働省のページをご参照ください。
    医薬品等輸入確認証の発給を要せず個人輸入可能な医薬品等の数量について

 

この7つを意識することを前提に、3つのシフト事例に基づき推奨の過ごし方をご紹介します。

シフト事例1

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シフト1の対策事例▼

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こちらのシフト事例1の場合には、休日を含めると日勤リズムを多くすることが可能なので、(1)つ目ポイントは基本は日勤リズムをキープするということです。(2)つ目は夜勤前の日中に仮眠をすることで仕事中の眠気を抑えるということ、(3)つ目は夜勤の仕事中にも30分未満の仮眠を取るということ、(4)つ目は夜勤明けはとても心身に疲労感が蓄積しているので、本睡眠の質を阻害しないタイミングで仮眠をする、(5)つ目は土日は日勤リズムを強化するため意識的に朝のタイミングに太陽光をたくさん浴びる。

 

シフト事例2

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シフト2の対策事例▼

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こちらのシフト事例2の場合には、(1)つ目のポイントは、シフト①から②にずらすために、①の最終日はいつもより遅く眠ることを意識します。とはいえ睡眠圧の蓄積で起きていられない時には休憩中の仮眠のタイミングを後退させることが有効です。Day5の日中の仮眠も同様の理由です。(2)つ目はシフト①から②にずらすために起床時刻も同様に後退させることがポイントになります。(3)つ目はシフト②から③にずらすために間の休日ではリズムを後退させます。(4)つ目は③のシフトの際の本睡眠は日中になるので、人工的に寝室で夜を作るため、部屋に遮光カーテンなどを使うなど、家族の物音で起きないために耳栓を使う、また僅かな光も覚醒に近づくため、できればアイマスクの着用もオススメです。

 

シフト事例3

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シフト3の対策事例▼

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こちらのシフト事例3の場合には、前述の7つの原則で紹介したように私たちはリズムを前進させることは身体にとても負担がかかりますので、できる限り仮眠も含め睡眠時間を長く取ることを意識するとの同時に、職場でこのようなシフトを根源的に設計しないことが根本解決に繋がります。
(1)つ目はシフト事例2の(4)つ目と同様です。(2)つ目は「アンカースリープ」の実践です。アンカースリープというのはご覧のように1日の中で共通して寝ている睡眠時間帯を増やす行為を意味します。このアンカースリープをできる限り多く確保することが重要になります。例えば医療職の看護師の夜勤であれば通常日勤の時に寝ている時間帯かつ深部体温が一番低くなる起床の2時間前の明け方3時〜6時(個人差あり)の間に眠ることで身体にかかる負担を軽減することが期待できます。(3)つ目はシフト②の後は心身ともに大きな疲労感があるので仮眠をして、Day11の休日にたっぷりと休息をとりDay12のシフト①に備えることがポイントになります。

弊社が交代勤務をもつ企業様に提供できる睡眠セミナーのオプションは以下2つになりますので、必要に応じてお問い合わせ頂ければ幸いです。

  1. 一般的な内容と上記のような事例をもとにオススメの過ごし方をご提供
  2. 事前に実際の現場のシフト情報をご共有頂き、現場ごとのオススメの心身への負担が少ない過ごし方をご提供

 

組織や社会

大前提として冒頭でも述べた通り、交代勤務は本来の人間の生体リズムを無視したとても過酷な労働環境になります。そのなかで日勤者で健康な方の仕事のパフォーマンスを100%とした時に、交代勤務者においては100%の実現は不可能であることが多いです。
しかし、上記のような工夫をすることで70%くらいのパフォーマンスを維持することは努力しだいで可能になります。その従業員の努力を支援するために、会社および社会として出来る工夫としては、仮眠制度の導入、仮眠ルームの設置、勤務間インターバル制度の導入、人じゃなくても出来る業務はAIやロボットなどDXツールの導入で極力作業の自動化するといった交代勤務者への寄り添いが重要です。
その結果として、企業としては睡眠問題を解決し、離職率の低下、ブランド価値向上、採用力アップ、そして注意力の低下によるヒューマンエラーや産業事故の防止、最終的には集中力や生産性が向上することでの企業の利益向上が大いに期待できます。

 

交代勤務労働者の社会での役割と意義

最後に、ここまで述べた通り、現代社会は交代勤務者の労働なしでは決して成り立たない構造になっています。しかし、その働き方は人間(生物)本来の生活とはかけ離れているがゆえに、身体に無理がかかりそれが様々な健康リスクに繋がっています。そのような負担を許容しながら経済を止めないために労働して頂いている交代勤務者の皆様に心から敬意を払うと同時に、中長期的にはそのような方を減らすような社会システムの構築が急務と考えます。

 

執筆者:小林 孝徳(こばやし・たかのり)
株式会社ニューロスペース代表取締役社長
一般社団法人 睡眠ヘルスケア協議会 代表理事
一般社団法人 日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士
著書:
①ハイパフォーマーの睡眠技術 Sleep Skill(実業之日本社)
②睡眠パターン×働き方で導く!あなたの良眠ナビ(池田書店)
③Forbes Japanオフィシャルコラムニスト 睡眠をアップデート