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健康診断の「睡眠で十分な休養がとれていますか?」だけで足りる?従業員の睡眠課題を把握する追加3設問

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企業の健康管理において、「睡眠」はますます重要なテーマになっています。

厚生労働省は2024年に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を公表し、睡眠時間だけでなく、睡眠によってどれだけ休養できているかという「睡眠休養感」の重要性も示しています。

一方、企業の定期健康診断などでは、

「睡眠で十分な休養がとれていますか?」

という質問で選択肢も「はい」「いいえ」の2択だけで睡眠状態を確認しているのが現状です。

もちろん、この質問自体は従業員の睡眠状態を把握する重要な入口です。
しかし、産業医・保健師・人事の方からすると、ここで一つ問題があります。

それは、従業員本人が

「具体的にどのような状態が、睡眠で十分な休養がとれている状態かを理解されていない」

ということです。

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では、従業員の睡眠状態をもう一段深く把握するには、どのような質問を加えればよいのでしょうか?
今回は、企業で200社・10万人以上の睡眠改善を支援してきた経験をもとに、産業保健の現場でぜひ確認していただきたい「追加3設問」をご紹介します。

■なぜ「睡眠で十分な休養がとれていますか?」だけでは不十分なのか

大きな理由の一つは、そもそも従業員一人ひとりが考える「十分な休養がとれている状態」には差がある」からです。

慢性的に朝のだるさを感じている人の場合、その状態が本人にとって「普通」になってしまい、「特に問題はない」と判断してしまうこともあります。

さらに、「十分な休養がとれていない」という同じ回答でも、その背景は一つではありません。

主な原因として、睡眠時間の不足、睡眠の質を悪化させる生活習慣、不規則な生活・起床リズム、クロノタイプと仕事や生活との不一致、疾病罹患という4つが考えられます。

つまり、

「睡眠で休養がとれていない」

という結果だけを聞くのではなく、その背景にある状態や自覚症状まで確認することが重要なのです。そこでおすすめしたいのが、次の3つの質問です。

■追加設問1「平日、昼間の眠気によって仕事に支障を感じるか?」

まず確認したいのが、

「平日、昼間の眠気により、集中力の低下や仕事への支障を感じることがありますか?」

という質問です。医学用語では機能障害と呼ばれ、もっとも重要な指標になります。

睡眠を評価するとき、単に「何時間眠ったか」だけではなく、翌日の日中にどのような影響が出ているかを見ることが非常に重要です。

たとえば、

  • 午前中から頭がぼんやりする
  • 昼食後に強烈な眠気がある
  • 会議中に眠くなる
  • 集中力が続かない
  • 仕事中にミスが増える

といった状態です。

本人が「自分は6時間眠れば十分」と思っていても、毎日のように仕事中の眠気や集中力低下が発生しているのであれば、現在の睡眠が本人に合っているかを改めて確認する必要があります。

特に産業保健の観点では、「眠れているか」だけではなく、睡眠が翌日の仕事の機能にどの程度影響しているかを確認することで、睡眠問題の解像度が大きく上がります。

■追加設問2「平日と休日の睡眠時間に2時間以上の差があるか?」

2つ目は、

「平日と休日の睡眠時間に2時間以上の差がありますか?」

という質問です。これは平日に蓄積している睡眠不足、いわゆる睡眠負債を把握する手がかりとして位置づけています。

たとえば
「平日は6時間睡眠なのに、休日になると8〜9時間以上眠っている」
こうしたケースでは、平日に不足している睡眠を休日に補っている可能性があります。

本人に「睡眠不足だと思いますか?」と聞いても、「昔から6時間なので大丈夫です」

と答えるかもしれません。

ところが、休日には自然と長時間眠っている。
このように、本人の認識と実際の睡眠ニーズが一致していないケースは珍しくありません。

「平日と休日の差」という具体的な行動を質問することで、本人の主観だけでは見えにくい睡眠不足を把握しやすくなります。

■追加設問3「平日の起床時にすっきり感があるか?」

3つ目は、

「平日の起床時に、すっきり感がありますか?」

という質問です。これはまさに「睡眠休養感」を、より具体的な感覚として確認する質問です。

ポイントは「眠れましたか?」ではなく、「起きたときにどう感じるか」を聞くことです。

たとえば毎朝、

「身体が重い」「もっと寝ていたい」「目覚ましを何度も止めてしまう」

という状態が続いている場合、本人が睡眠問題を自覚していなくても、睡眠状態を詳しく確認するきっかけになります。

一方で、起床時のすっきり感だけですべてを判断できるわけではありません。

だからこそ、

日中の状態 × 平日と休日の睡眠時間差 × 起床時の状態

という3方向から確認することが重要なのです。

余裕があれば「夜、同じ時間帯に眠くなるか?」も確認する

さらにもう1問追加できるのであれば、

「夜になると、だいたい同じ時間帯に眠気を感じますか?」

という質問もおすすめです。

これは、生活リズムや体内時計が安定しているかを把握する手がかりになります。
毎日寝る時間が大きく変わる、夜になっても全く眠くならない、休日になると生活時間が大幅に後ろ倒しになる、といった場合には、睡眠時間だけでなく睡眠・覚醒リズムにも目を向ける必要があります。

■「はい・いいえ」ではなく「頻度」で聞くとさらに分かりやすい

企業で実際にアンケートとして活用するのであれば、単純な「はい/いいえ」よりも頻度まで質問することをおすすめします。

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上記のように、たとえば日中の眠気について「ほとんどない」「週1〜2回」「週3回以上」「毎日」、平日と休日の睡眠時間差について「ほとんどない」「月1〜2週」「月3週以上」「毎週」といった聞き方を例示しています。

頻度まで確認することで、

「たまに眠い人」と「毎日のように仕事へ影響している人」

を同じ扱いにせず、産業保健スタッフによる面談やフォローの優先順位を考えやすくなります。

ただし、こうした質問は病気を診断するためのものではありません。あくまでも、詳しい確認や医療職への相談につなげるためのスクリーニングとして活用することが大切です。

■睡眠は「全員に同じ指導」をすればよいわけではない

企業の睡眠施策で特に重要なのが、適切な睡眠は一人ひとり違うという認識です。
適正睡眠時間に加えて、朝型・中間型・夜型といったクロノタイプには個人差があります。

そのため、
「全社員、23時までに寝ましょう」
「朝型生活にしましょう」
「毎朝早起きしましょう」

といった一律の指導だけでは、必ずしも十分ではありません。

重要なのは、その人にとって必要な睡眠時間、生活リズム、仕事内容、勤務時間などを踏まえて考えることです。

特に夜型傾向の強い従業員やシフト勤務者などでは、個人の努力だけで解決するのではなく、企業側の労働環境にも目を向ける必要があります。

■企業の睡眠対策は「把握→環境→教育」の3段階で考える

では、企業は具体的に何をすればよいのでしょうか。

今回の資料では、大きく3つの方向性を提示しています。

① 睡眠状態を正しく把握する → ② 睡眠を確保しやすい労働環境を整える → ③ 睡眠リテラシーを高め、セルフケアを促す

という流れです。

たとえば最初の「把握」の段階では、今回ご紹介した追加設問を健康診断や社内サーベイに加える。その結果、「睡眠時間を確保したくても勤務時間の問題で難しい」という人が多ければ、勤務間インターバル制度やフレックスタイム制、在宅勤務、仮眠制度など、職場環境そのものを見直す。

同時に、従業員が自分自身の睡眠を改善できるよう、睡眠に関する正しい知識を提供する。

このように、個人への生活習慣指導だけで終わらせず、組織の仕組みまで含めて睡眠対策を設計することが重要です。

■「生活習慣を改善すれば解決する」とは限らない

もう一つ忘れてはいけないのが、睡眠問題の背景には、生活習慣だけでは解決できないケースがあることです。

睡眠時無呼吸症候群、不眠症、うつ病、むずむず脚症候群、REM睡眠行動障害などが背景にある場合、睡眠時間の確保や生活習慣改善だけでは高い睡眠休養感につながらない可能性を示しています。

そのため、

「毎日のように強い眠気がある」
「十分な睡眠時間を確保しているのに起床時の不調が続く」
「仕事や日常生活への支障が大きい」

といった場合には、単純に「もっと早く寝てください」と指導するだけではなく、産業医や保健師、必要に応じて専門医療機関につなげることも重要です。

■まとめ|「睡眠で休養がとれていますか?」の先まで聞いてみる

「睡眠で十分な休養がとれていますか?」という質問は、従業員の睡眠状態を知る重要な入口です。ただし、この1問だけでは、

  • なぜ休養がとれていないのか。
  • どの程度仕事に影響しているのか。
  • どのような対策が必要なのか。

までは分かりません。

そこで、まずは次の3つを追加してみてください。

① 平日、日中の眠気によって集中力低下や仕事への支障を感じるか?

② 平日と休日の睡眠時間に2時間以上の差があるか?

③ 平日の起床時にすっきり感があるか?

さらに余裕があれば、

④ 夜にだいたい同じ時間帯に眠気を感じるか?

まで確認します。

健康診断の1問を「ゴール」にするのではなく、従業員の睡眠課題を見つける入口として活用する。それだけでも、企業の睡眠施策は「睡眠セミナーを実施する」だけの施策から、一人ひとりの課題に合わせた健康支援へと一段進めることができます。

■よくある質問

Q. 「睡眠で十分な休養がとれている」と回答していれば問題ないのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。慢性的な睡眠不足や朝のだるさに慣れてしまい、自分では問題を認識していないケースもあります。日中の眠気や休日の睡眠時間など、具体的な状態と組み合わせて確認することが重要です。

Q. 企業で追加するなら、どの睡眠設問を優先すればよいですか?

まずは「日中の眠気・仕事への支障」「平日と休日の睡眠時間差」「起床時のすっきり感」の3項目がおすすめです。さらに詳細に確認できる場合には、夜に一定の時間帯で眠気を感じるかも確認すると、生活リズムの状態を把握する参考になります。

Q. アンケートだけで睡眠障害を判断できますか?

アンケートだけで医療的な診断をすることはできません。強い眠気や生活・業務への支障が継続している場合には、産業保健スタッフによる確認や医療機関への受診につなげることが重要です。

執筆者 :小林 孝徳(こばやし・たかのり)

株式会社ニューロスペース 代表取締役社長

一般社団法人 日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士
一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会 理事長
Forbes Japanオフィシャルコラムニスト。

自身の睡眠障害の実体験をもとにこの大きな社会課題を解決したいと決意し2013年に株式会社ニューロスペースを創業。これまで健康経営や働き方改革を推進する企業200社10万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善を支援。一人ひとり最適な答えが異なる睡眠を、如何に楽しくデザインし改善できる仕組みづくりを専門としている。

著書:

・ハイパフォーマーの睡眠技術 Sleep Skill(実業之日本社)
・あなたの良眠ナビ(池田書店)
・夜型さんの無敵の仕事術(ナツメ社)