
健康経営方針を大きく見直した株式会社GSユアサ様では、「睡眠が最も生産性に影響している可能性がある」という社内分析から、ニューロスペースの「睡眠チェックMy Sleep」「SAS(睡眠時無呼吸症候群)サーベイ」「睡眠セミナー」を全社展開しました。
導入に至るまでの経緯や実施後の感想について、株式会社GSユアサにて健康経営を推進する人事部 健康管理グループの看護職の方と、実際にサービスを受けた社員の方に、お話を伺いました。



■ 施策検討の背景
― 施策の導入検討までの背景を教えてください
2025年度、当社は健康経営方針の確実な達成に向けて健康経営戦略マップを刷新し、従業員の意識・行動変容を促す6つのセルフケア項目を「健康ENERGY-6」と命名しました。
この健康ENERGY-6を軸に、全社的な健康経営推進の第一弾となる具体的施策として「睡眠」に関する企画をしました。

― なぜ「睡眠」に着目したのでしょうか
まず、社内の状況を把握するため、社員の健康診断やストレスチェックのデータを基に、生活習慣とプレゼンティーズムを掛け合わせた現状分析を行いました。その結果、食事や運動といった他の生活習慣よりも、睡眠が会社の労働生産性に影響している可能性があることが見えてきました。
さらに、日頃の面談の中でも、食事や運動より「睡眠で困っている」という声を多く聞くという実感があり、こうしたデータ分析結果と現場での肌感覚の両方から、まずは睡眠をテーマに取り組むことになりました。
― ニューロスペースを選んだ理由は
情報収集を含め、7社のサービスを比較検討しました。その中で、導入施策としては、睡眠課題を持つ人のみを対象としたサービスよりも、健康な人も含めた全社員が参加できる内容(ポピュレーションアプローチ)が望ましいという結論に至りました。
また、健康イベントというと、健康意識の高い層や50代・60代といった健康を意識し始めた層に参加者が偏りがちです。しかし、睡眠チェック My Sleepのレポートはデザインが親しみやすく、若い社員や普段健康イベントに参加しない層にも興味を持ってもらいやすいと考え、採用の決め手の一つとなりました。

睡眠チェック My Sleep レポートイメージ
■ 導入の意思決定プロセス
― 社内決裁を得るうえで、苦労されたことは
直属の上司は企画に対し非常に前向きでした。ただ、一般的には「睡眠と業務・生産性との関係」や「会社が睡眠に取り組む意味」が十分に理解されているわけではありません。上司からも「そこをきちんと説明できた方がよい」という話がありました。
― その壁をどのように乗り越えたのでしょうか
生活習慣ごとのプレゼンティーズムによる損失を金額換算したところ、睡眠によるプレゼンティーズム損失が最も大きいという結果が出ました。また、睡眠課題によって、1人あたり年間で約35万円の損失になる可能性があるという試算もあり、視覚的なデータと具体的な数字で示すことで睡眠の影響の大きさを経営層含め多方面に理解してもらうことができました。
― 今回の取り組みは全国展開でしたが、最初からその想定だったのでしょうか
もともとは京都本社のイベントとして企画を考えていましたが、上司に相談したところ「全国でもできないか」という話になり、そこから急いで全国展開に向けた準備を始めました。
― 全国展開はスムーズに進みましたか
各拠点と連携しながら準備を進める必要があり、大変ではありましたが、上司が旗振り役となってくれたこともあり、実現しました。当社では拠点ごとの取り組みはこれまでもありましたが、全国一斉の企画はほぼ初めてでした。そのため、各拠点の看護職や総務担当者にサポートを依頼しながら、安全衛生委員会等で丁寧に趣旨を説明していくステップを踏みました。
■ 実施内容(導入サービス)
※本記事では、「睡眠チェック My Sleep」と「SASサーベイ」をあわせて「睡眠チェック」と表記します。
(1)看護職向けセミナー
社員向けの睡眠セミナーを実施する前に、全国拠点看護職を対象としたデモセミナーを実施しました。デモセミナーでは、睡眠に関する基礎知識や実践的な「睡眠の技術」を学ぶことができ、「日々の面談の中で、睡眠支援を一層手厚く行えるようになった」と好評でした。また、看護職自身がセミナーを体験することで、各拠点でのセミナーPR活動がスムーズに行えました。
(2)睡眠チェック My Sleep・SAS(睡眠時無呼吸症候群)サーベイ
睡眠チェック My Sleepでは、5分程度のアンケートに答えるだけで、一人ひとりにパーソナライズされた判定結果(A~E)とアドバイスがレポート形式で提供されます。
SASサーベイは、6問の質問に回答すると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを低・中・高の3段階で確認できます。
いずれも短時間で実施できるため、健康施策に普段あまり関心のない社員にも参加してもらいやすく、睡眠を見直すきっかけづくりにつながりました。

(3)睡眠セミナー
My Sleepの結果をもとに、さらにご自身でセルフケアができるよう、睡眠改善のポイントや日常生活で取り組める具体的な対策について解説するセミナーを実施しました。
セミナーでは、睡眠チェックで問題意識をもった社員が積極的に参加・質問をする姿がみられました。

睡眠セミナー 内容イメージ
■ 参加された社員の声
以下の内容は、睡眠チェックの結果、医療機関への受診が必要と判断された方に、お話を伺いました。
(1)Kさん (60代・男性)
日中の強い眠気をきっかけに受診し、現在は経過観察へ
睡眠に関するお悩み:日中耐え難い眠気があり、会議中にも眠気に襲われることが度々ある
― 睡眠チェックを受けようと思ったきっかけを教えてください。
以前から、家族に「寝ているときに呼吸が止まっていることがあるよ」と言われていました。自分では自覚症状はなかったものの、「息が止まっている」と聞くと少し怖いなと感じていました。
気にはなっていましたが、特に体調が悪いわけでもなかったので、そのままにしていました。一方で、家族からは「一度病院に行ってみたら?」と言われていたので、そのうち受診しようとは思っていました。
そんな中、健康診断後に睡眠チェックの案内があり、「ちょうどいい機会かもしれない」と思って受けてみることにしました。
― 医療機関の受診を勧めるメールを受け取ったとき、どのように感じましたか。
「やっぱり一度病院に行かなきゃいけないかな」と思いました。これまで受診のタイミングを決めきれずにいましたが、このメールが背中を押してくれたような感覚でした。
― 病院はどのように探されましたか。
最初は、どこに行けばよいのか分からず、インターネットでも調べましたが、自宅の周辺だと通いづらい場所が多くて、近くに適当な医療機関がないなと考えていました。
そんなとき、普段から通っている循環器の病院で、睡眠時無呼吸症候群の検査案内のポスターを見つけたのです。以前は気にしていなかったので目に入らなかったのですが、睡眠のことを意識し始めて情報が自然と目に入るようになりました。
先生に相談したところ「ここでも検査できます」と言われ、そのまま受けることにしました。もともと通院している病院だったこともあり、受診へのハードルはかなり下がりましたね。それをきっかけに、すぐに検査を申し込みました。
― 検査結果を聞いたときは、どのように受け止めましたか。
検査の結果、「呼吸が止まることはあるが、現時点では治療が必要なレベルではない」と説明を受けました。
医師からは「1時間に20回以上呼吸が止まると治療対象となるが、あなたは12〜13回程度」と言われました。今後の変化も考慮し、半年から1年に一回程度のペースで経過観察を行う方針となっています。
(2)Tさん (40代・男性)
いびきをきっかけに受診し安心につながり、睡眠への理解や関心が高まった
睡眠に関するお悩み:寝ても疲れがとれず睡眠に満足していない状態が続いている
― 睡眠チェックを受けようと思ったきっかけを教えてください。
社内の安全衛生に携わる立場で健康管理の取り組みに関わっているため、案内が来たタイミングですぐに受けようと思いました。
― 医療機関の受診を勧めるメールを受け取ったとき、どのように感じましたか。
もともと妻から「いびきがひどくなっている」と言われていたこともあり、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかもしれないという認識はありました。
― どのような流れで受診されましたか。
アレルギーで通っている耳鼻科の待合室で、睡眠時無呼吸症候群に関する案内を見かけ、検査を受けることにしました。
簡易検査の結果、数値はやや高めでしたが、治療が必要なレベルではないことが分かり、安心しました。
― 今回の睡眠施策の前後で、睡眠に対する関心の変化はありましたか。
もともと睡眠や健康への関心はそれほど高くなく、「決まった時間に寝て起きていれば問題ない」という程度の認識でした。しかし、睡眠チェックを受けたことで医療機関を受診するという具体的な行動につながり、受診を考える後押しになりました。
また、睡眠セミナーでは他の人や会社全体の傾向を知ることができ、自分の状況を客観的に見直すよい機会になりました。その結果、睡眠に対する理解や関心は以前より高まったと感じていますし、自分だけでなく、多くの人にとっても気づきにつながる内容だったと感じています。
■ 導入後の評価
― 睡眠チェックを実施してみていかがでしたか
最終的な参加率は61%となり、取り組み全体としては非常に前向きな成果だったと感じています。特に、他の健康イベントでは参加率が伸びづらい若い社員の参加が多かった点は、大きな収穫でした。
参加率向上のために、健康診断とあわせて睡眠チェックを実施しました。これにより、パソコンを貸与されていない現場の方も含め、受診の流れの中で自然に参加できる導線をつくることができました。
あわせて、役職者や労働組合の方など、さまざまな立場の方々にもご協力いただき、各拠点で適宜リマインド案内を行いました。役職者の中には、ご自身のレポートを社員向けに共有してくださったり、他拠点の知り合いにも声がけをしてくださる方もいて、取り組みが社内に少しずつ広がっていくのを実感しました。
― 睡眠チェックの結果について、どのような印象でしたか。
意外だったのは、想定していたよりも睡眠時間を確保できている社員が多かったことです。
これまで社内では睡眠休養感に関するデータは把握していましたが、実際の睡眠時間については把握できていませんでした。今回、初めて具体的な睡眠時間のデータを確認できたことは、意味のあることだと感じました。
さらに、役職や夜勤の有無といった条件による違いも見えてきました。予想通りだと感じる点もあれば、想定していたほど大きな差はないという新たな発見もありました。
― My Sleepの結果を看護職等による面談でも活用されたと伺いました
はい、実際に看護職が面談の中で活用しました。
事前に睡眠チェックの回答内容を確認しておいて、睡眠に課題がありそうな場合は面談の中で一緒に見ながら話すこともあります。あくまで情報の一つではありますが、面談の中で活用することで、より具体的な健康支援につなげることができました。
― 睡眠チェック後には睡眠セミナーを実施しましたが、反応はいかがでしたか
京都本社は対面セミナーで110名、本社以外の拠点では、6拠点から総計98名が参加されました。
実は100名規模でのセミナー開催は今回が初めてでしたので、事前に参加者を集めるための策を準備していましたが、結局リマインド案内を流しただけで当日は想定を上回る参加人数となりました。
アンケートの結果もとても良く、92%が満足するなど非常に好評でした。セミナー中も質問が尽きず、皆さんが高い関心を持っていることが分かりました。
また、京都本社では、セミナー後も睡眠改善に向けた行動を継続いただけるようインセンティブ企画を準備しました。その結果、よりよい睡眠のための行動の継続率は75%以上となりました。セミナーを聞いて終わりではなく、実際の行動変容につながった点はとても良かったと感じています。

睡眠セミナー アンケート結果
― 今後の展望を教えてください。
今回のデータを、今後はさらに多角的な分析のために、さまざまなデータと組み合わせて活用していく予定です。また、睡眠に留まらず、食事や運動なども含めた総合的な健康施策を推進していきます。
一方で、看護職として、ハイリスク者への対応はもちろんのこと、ポピュレーションアプローチ(全社員を対象とした取り組み)の重要性も認識しています。健康経営は全社員が対象であるため、今後もこの両面を考慮しながら、バランスの取れた施策を検討していく方針です。