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健康経営の睡眠対策7選|Q55・企業事例・効果を解説【2026年版】

健康経営における睡眠対策|企業が取り組むべき施策・事例・効果を解説

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従業員の健康づくりというと、「食事」「運動」「メンタルヘルス」などを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、健康経営において重要性が急速に高まっているのが「睡眠」です。

令和8年度(2026年度)の健康経営度調査では、「従業員の睡眠の質向上のための取り組み」がQ55として独立した設問となりました。仮眠環境、SAS(睡眠時無呼吸症候群)対策、睡眠改善アプリ、ウェアラブルデバイス、産業保健スタッフによる睡眠指導など、企業が実施できる具体的な睡眠施策が示されています。

なお、独立したQ55についての詳細記事はこちらをご確認ください

私は2013年にニューロスペースを創業して以来、200社・延べ10万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善を支援してきました。その経験から強く感じるのは、企業の睡眠対策は「睡眠セミナーを一度開催する」だけでは十分ではない、ということです。

重要なのは、従業員の睡眠課題を把握し、原因に応じた施策を実施し、その効果を確認することです。

この記事では、人事、健康経営担当者、産業医、保健師の皆さまに向けて、健康経営における睡眠対策を具体的に解説します。

■健康経営で「睡眠」が重要になっている理由

睡眠は、従業員個人の健康だけの問題ではありません。

十分な睡眠が取れない状態が続けば、日中の眠気や集中力低下などを通じて、仕事のパフォーマンスにも影響します。また、不眠症や睡眠時無呼吸症候群など、医療的な対応が必要なケースが隠れていることもあります。

企業として睡眠を見る際に重要なのは、単に「何時間眠っているか」だけではなく、

睡眠時間

睡眠の質

睡眠・覚醒リズム

疾病リスク

日中の眠気やパフォーマンス

を総合的に考えることです。

厚生労働省が2024年2月に公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠時間だけでなく、睡眠によって十分に休養がとれたと感じられるか=睡眠休養感も重要な指標として示されています。

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出典元:睡眠ガイド2023をもとにニューロスペースが独自で作成

一般的には、自分に合った睡眠時間を確保し、運動・食事・光環境・就寝前の過ごし方など、適切な睡眠衛生習慣を整えることで、睡眠休養感の改善が期待できます。

一方で、こうした生活習慣を整えても「寝ても疲れが取れない」「十分な休養感が得られない」状態が続く場合には、睡眠時無呼吸症候群や不眠症などの睡眠障害、うつ病などの疾病が背景にある可能性にも注意が必要です。

そのため企業の睡眠対策では、睡眠時間と睡眠衛生を整える支援に加え、それでも休養感が得られない場合は、産業医・保健師への相談や医療機関への受診につなげるという視点が重要です。

※ちなみに睡眠休養感とは『起きたときのすっきり感』のことです。


以前ニューロスペースのメルマガ読者に「睡眠休養感とは何か?ご存知ですか?」という独自アンケートをとったところ112人の方から回答があり、産業医、保健師、人事などの産業保健スタッフにも関わらず、正しく認識されている方が51%という結果になりました。
ご関心がある方は、こちらの記事をご覧ください。

■令和8年度健康経営度調査では「睡眠」がQ55として独立

2026年度の健康経営度調査では、Q55として「従業員の睡眠の質向上」が独立しました。

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具体的には、仮眠室などの休憩環境、パワーナップ制度、執務室の照明、睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング、睡眠改善アプリ、ウェアラブルデバイス、産業医・保健師等による睡眠関連指導などが挙げられています。

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出典元:https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/kk2027sample_dai.pdf

ここで注意したいのは、「何か1つ実施すれば健康経営優良法人に認定される」という意味ではないことです。

むしろ重要なのは、自社の健康課題を把握した上で、なぜその施策を選び、どのような変化が生じたかを説明できることです。

■健康経営で企業ができる睡眠対策7選

企業が実施できる睡眠対策はさまざまですが、対象者や費用、導入のしやすさ、評価すべきKPIは施策によって異なります。まずは代表的な施策を比較してみましょう。

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自社の課題や対象者によって適した施策は異なります。以下、それぞれの施策について詳しく解説します。

1.まず従業員の睡眠課題を把握する

最初から施策を決めるのではなく、まず現状把握を行うことをおすすめします。

例えば同じ「寝ても疲れが取れない」という従業員でも、その原因は上記の睡眠ガイドの図で示したように、睡眠不足、生活リズム、睡眠衛生習慣、ストレス、SASなどさまざまです。

全社員を対象とした睡眠サーベイや健康診断、ストレスチェックなどを組み合わせ、

「誰に、どのような睡眠課題があるのか」

を把握することが、睡眠施策のスタートになります。

2.SASなど医療的な睡眠課題を見逃さない

企業の睡眠施策では、生活習慣へのアプローチだけでは解決できないケースにも目を向ける必要があります。

代表的なのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。

特に運転、製造、建設など、安全性が重視される職種では、日中の強い眠気は本人だけでなく、事故リスクにも関わります。

令和8年度の健康経営度調査Q55でも、SASの検査・スクリーニングが具体的な取り組みとして挙げられています。

3.睡眠リテラシーを高める

多くの従業員は「睡眠が大切」ということ自体は理解しています。

しかし、

「朝の光をどう活用すればよいか」

「休日の寝だめはどう考えればよいか」

「夜勤前後はどう眠ればよいか」

「眠れない時はどうすればよいか」

といった具体的な睡眠スキルについては、意外と知られていません。

そのため睡眠セミナーやeラーニングなどによる教育も有効です。

なお、令和8年度Q55の確定版では「睡眠セミナー」そのものは直接の選択肢には入っていませんが従業員の健康リテラシー向上の意義は経産省の資料でも言及されています。

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出典元:https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/kk2027sample_dai.pdf

ここは旧調査票との違いとして注意が必要です。セミナーはQ55のためだけではなく、健康リテラシー向上や、その後の行動変容につなげる基盤施策として考えるのが適切です。

4.睡眠課題が大きい従業員には個別支援を行う

全社員向けの情報提供だけでは改善しにくい従業員もいます。

そこで、サーベイなどから睡眠課題が大きい人を抽出し、産業医、保健師等による保健指導や、必要に応じて医療機関への受診勧奨につなげます。

健康経営では、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせることが重要です。

5.仮眠・休憩できる職場環境を整える

十分な睡眠時間を確保することが基本ですが、夜勤や交替勤務などでは勤務時間そのものをすぐに変えられない場合があります。

そのような職場では、仮眠室やリフレッシュルーム、適切な休憩制度など、会社側が環境を整えることも重要です。

令和8年度Q55でも、仮眠室等の設置やパワーナップ制度、照明環境の工夫が具体的な取り組みとして挙げられています。

6.アプリ・ウェアラブルを活用する

睡眠改善で難しいのは、「知識を得ること」より「実際の生活の中で続けること」です。

ウェアラブルデバイスやアプリを利用すると、自分の睡眠を客観的に振り返りやすくなります。

ただし、計測すること自体が目的になってはいけません。

計測→気づき→行動→振り返り

までつなげる仕組みを作ることが重要です。

7.働き方そのものにも目を向ける

睡眠を従業員個人の自己責任だけにしてしまうと、企業の睡眠対策には限界があります。長時間労働、勤務間隔、夜勤・交替勤務など、睡眠時間を圧迫する組織側の要因にも目を向ける必要があります。

2026年7月にニューロスペースが開催したセミナーでは、産業医科大学の中田光紀教授に、長時間労働・睡眠不足・うつの関係についてご講演いただきました。

研究では、労働時間の長さだけを見るよりも、その働き方によって十分な睡眠を確保できているかどうかが、従業員のメンタルヘルスを考えるうえで重要であることが示されています。

そのため企業では、単に「残業時間を減らす」だけでなく、

「その働き方で従業員が十分に眠れているか」

まで確認することが重要です。

特に長時間労働やシフト勤務のある職場では、勤務制度と睡眠をセットで考える必要があります。

→ 長時間労働・睡眠不足・うつの関係について詳しくはこちら

■睡眠施策は「測る→分ける→介入→評価」で考える

私たちが企業の睡眠対策で特に大切だと考えているのが、

測る → 分ける → 介入する → 評価する

という考え方です。

例えば「睡眠休養感が低い」という同じ結果でも、

睡眠時間が足りない人、睡眠衛生習慣に課題がある人、SASなど疾病の可能性がある人では、必要な対策が異なります。

全員に同じ睡眠セミナーを提供するだけではなく、原因別に適切な施策を届けることで、健康経営施策としての効果も評価しやすくなります。

■健康経営における睡眠対策の企業事例

ニューロスペースでは、さまざまな企業の睡眠施策を支援しています。

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GSユアサ様では、健康診断やストレスチェック等の分析から、食事や運動と比較して睡眠が労働生産性に影響している可能性があることを把握し、MySleep、SASサーベイ、睡眠セミナーを全社施策として導入されて、リスク者全員と産業保健スタッフの皆様が個別面談を実施されています。

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旭化成様では、「睡眠の質・量の向上」を健康経営の目標として設定し、睡眠改善プログラムを実施。参加者では睡眠満足度やISIの改善が確認されています。

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東京メトロ様では、シフト勤務や宿泊勤務を含む現業社員を中心に睡眠改善プログラムを継続的に活用されています。

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三菱ふそうトラック・バス様では、睡眠セミナーとSASサーベイを組み合わせた取り組みを実施しています。

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三菱地所様では、どのような仮眠室を作ればよいかについてコンサルティングをさせて頂きました。

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出典元:プレス工業様 サステナビリティページ

プレス工業様ではMySleepの結果をもとに、リスク者に対して産業保健スタッフが個別面談を実施頂きました。

その他の企業事例については以下をご参照ください。

■睡眠改善は企業にどのような効果をもたらすのか

ニューロスペースの睡眠改善プログラムを用いた研究では、時間管理能力、集中力、仕事の成果に改善が確認され、企業にとっての経済効果が1人あたり年間約12万円と試算されています。
掲載元:睡眠改善アプリを用いた健康経営施策が生産性に与えた影響:RCTに基づく検証

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また、日本全体で見ると、RAND Europeは睡眠不足による日本の経済損失を18兆円、GDPの約2.9%と推計しています。

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睡眠対策を単なる福利厚生としてではなく、

健康

生産性

安全

メンタルヘルス

人的資本

を横断する経営施策として捉えることが重要です。

■自社に適した睡眠施策はどう選べばよいか

  • 従業員全体の睡眠状態が分からなければ、まずサーベイによる実態把握から。
  • 睡眠リテラシーが低ければ、セミナーやeラーニングから。
  • 日中の眠気やいびき等が課題であれば、SASスクリーニング。
  • 睡眠課題の大きい従業員が一定数いる場合は、個別支援や睡眠改善プログラム。
  • 交替勤務や夜勤が多い会社では、勤務体系を踏まえた専用施策。

というように、課題から逆算して施策を選ぶことをおすすめします。

「健康経営度調査に項目があるから何かやる」ではなく、自社の課題に合った対策を実施し、その効果を評価することが、健康経営の本来の目的です。

まとめ

健康経営における睡眠対策は、単に「よく眠りましょう」と従業員へ呼びかける段階から、組織として睡眠課題を把握し、適切な支援を行う段階へ変わりつつあります。

令和8年度健康経営度調査で睡眠がQ55として独立したことも、その流れの一つと言えるでしょう。

まずは自社の従業員が、

  • どの程度眠れているのか。
  • どのような睡眠課題を持っているのか。
  • その課題が仕事にどう影響しているのか。

を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。

ニューロスペースでは、睡眠時無呼吸症候群スクリーニング、睡眠セミナー、睡眠チェックMySleep、睡眠改善プログラムBizSleepなどを組み合わせ、企業ごとの課題に合わせた睡眠施策をご提案しています。

「自社の場合、何から始めればよいか分からない」という場合もお気軽にご相談ください。

執筆者 :小林 孝徳(こばやし・たかのり)

株式会社ニューロスペース 代表取締役社長
一般社団法人 日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士
一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会 理事長
Forbes Japanオフィシャルコラムニスト。

自身の睡眠障害の実体験をもとにこの大きな社会課題を解決したいと決意し2013年に株式会社ニューロスペースを創業。これまで健康経営や働き方改革を推進する企業200社10万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善を支援。一人ひとり最適な答えが異なる睡眠を、如何に楽しくデザインし改善できる仕組みづくりを専門としている。

著書:
・ハイパフォーマーの睡眠技術 Sleep Skill(実業之日本社)
・あなたの良眠ナビ(池田書店)
・夜型さんの無敵の仕事術(ナツメ社)