
本記事では、令和8年度(2026年度)健康経営度調査Q55「従業員の睡眠の質向上」について、設問内容・選択肢・回答時のポイントを詳しく解説します。
健康経営における睡眠対策全体について、企業が取り組むべき施策、企業事例、効果、生産性との関係まで知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
■健康経営度調査Q55「睡眠の質向上」とは|選択肢と企業の回答ポイント
令和8年度(2026年度)の健康経営度調査で、「睡眠」の位置づけが大きく変わりました。

これまで睡眠は、生産性低下防止策の中の一項目として扱われていましたが、令和8年度調査では、
Q55「従業員の睡眠の質向上のために、どのような取り組みを行っていますか」
として独立した設問になりました。

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■Q55の7つの睡眠施策

Q55では、次の7つが具体的な施策として示されています。
1.リフレッシュルームや仮眠室の設置
従業員が勤務中に休息できるスペースを整備する取り組みです。
特に夜勤・交替勤務、長時間の集中を要する職場などとの相性がよい施策です。
重要なのは「部屋が存在する」だけでなく、実際に従業員が利用できる運用になっているかです。
2.パワーナップ等の仮眠制度
設備を新設しなくても、短時間の仮眠を制度として認める方法があります。
仮眠を「サボっている」と捉える文化が残っている職場では、制度と同時に管理職への周知も必要になります。
3.執務室内の照明を工夫する
サーカディアン照明の導入や、昼食後の消灯など、光環境を活用した取り組みです。
睡眠は夜だけの問題ではなく、日中にどのような光を浴びるかも生体リズムに影響します。
4.SASの検査・スクリーニング
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・スクリーニングも明記されました。
SASは本人が気づかないケースもあるため、いびき、日中の強い眠気、肥満等のリスクを踏まえて対象者を抽出し、必要に応じて検査や受診につなげることが重要です。
運輸、製造など安全性が重視される業界では、特に重要な施策です。
5.睡眠改善や休憩取得を促すアプリ等
睡眠改善アプリなどを従業員が利用できる環境を提供する施策です。
単にアプリを配布するだけでなく、
利用 → 行動変容 → 効果測定
まで設計することが望まれます。
6.睡眠改善を目的としたウェアラブルデバイス
睡眠を計測できるウェアラブルデバイスの配布や費用補助も対象になっています。
睡眠を可視化することによって「自分ごと化」しやすいのがメリットですが、計測だけで終わらせないことが重要です。
7.産業医・臨床心理士・保健師等による睡眠関連指導
睡眠課題を抱える従業員に対し、産業保健スタッフ等が個別指導する取り組みです。
生活習慣で改善できる人と、SAS・不眠症など医療的な評価が必要な人を切り分ける意味でも重要です。
■「睡眠セミナー」はQ55に入っていない
ここは、令和8年度調査への対応を考えるうえで注意したいポイントです。

従来の健康経営度調査(令和6年まで)では「睡眠に関するセミナー」という施策が示されていましたが、令和7年および今回の令和8年Q55の7項目には、睡眠セミナー単独は直接の選択肢として含まれていません。
だからといって睡眠教育が不要という意味ではありません。
アプリ、仮眠制度、SAS対策などを導入しても、従業員が「なぜ必要なのか」を理解しなければ利用されないため、教育施策は各施策の土台として重要です。
■MySleepはQ55に直接該当する?
これもよくいただく質問です。
MySleepのような睡眠状態を可視化するサーベイそのものは、Q55の独立した選択肢として明記されているわけではありません。
一方、
誰にどの施策が必要なのかを把握する
産業保健スタッフの個別指導につなげる
施策前後の効果を評価する
ための基盤として活用できます。
つまり、「Q55にチェックを付けるためのサービス」ではなく、「Q55の施策を適切に設計するためのツール」と考える方が適切です。
■Q55は認定の「独立した必須項目」ではない
Q55が新設されたことで、
「何か睡眠施策を実施しなければ健康経営優良法人になれないのか?」
と心配される方もいるかもしれません。
Q55は健康経営度調査の独立設問ですが、現時点で健康経営優良法人の独立した認定評価項目になった、という意味ではありません。
大切なのは「チェックを何個付けるか」だけではなく、自社の健康課題と施策がつながっていることです。
■何から始めればよい?

予算が限られている企業が、最初から仮眠室や大規模なシステムを導入する必要はありません。
おすすめなのは、
現状把握 → 課題の大きい領域を選ぶ → 1つ施策を始める → 効果を測る
という順番です。
例えば、
- 日中の眠気やいびきが多い→ SASスクリーニング
- 夜勤者が多い→ 仮眠・シフト勤務対策
- 睡眠課題者が多い→ アプリ・ウェアラブル+個別支援
というように、自社の課題から施策を選びます。
健康経営度調査への対応そのものを目的にするのではなく、
「なぜ自社ではこの睡眠施策が必要なのか」
を説明できる状態にすることが、健康経営の本質です。
【参考記事:健康経営における睡眠対策7選】
【参考記事:健康経営の睡眠施策事例10社】
執筆者 小林 孝徳(こばやし・たかのり)
株式会社ニューロスペース 代表取締役社長
一般社団法人 日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士
一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会 理事長
Forbes Japanオフィシャルコラムニスト。
自身の睡眠障害の実体験をもとにこの大きな社会課題を解決したいと決意し2013年に株式会社ニューロスペースを創業。これまで健康経営や働き方改革を推進する企業200社10万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善を支援。一人ひとり最適な答えが異なる睡眠を、如何に楽しくデザインし改善できる仕組みづくりを専門としている。